[2014年11月特集インタビュー]

ヨガ業界の最近の動向、アメリカ・日本におけるピラティス業界の現状について~ヨガ編・ピラティス編

幅広い年齢層の一般の方からプロのアスリートの方まで広く認知されて、様々な方面で普及・展開しているヨガ・ピラティス・ボディワーク系プログラム。ヨガとピラティスから業界を牽引する2名の方に、「ヨガ編」「ピラティス編」としてスペシャルインタビュー。

◆ヨガ編……綿本 哲さん 《ヨガ業界の最近の動向について、業界の未来について》
◆ピラティス編……武田淳也さん 《アメリカ、日本におけるピラティス業界の現状について》

綿本 哲さん

ヨガ業界の最近の動向について、業界の未来について

綿本 哲さん
有限会社ヨガワークス代表取締役。
幼い頃から父にヨガの指導を受ける。大学卒業後、大手自動車メーカーにて、ロケットの開発に従事。93年からヨーガ教室の経営に携わり、各地でヨガの指導を行う。95年経営コンサルティング会社を設立後、03年、欧米スタイルのパワーヨガのマットやブロック等の国産初のブランド(有)ヨガワークスを設立。

ヨガマットやヨガグッズのブランドであり、業界を牽引し続ける(有)ヨガワークスの代表取締役・綿本 哲さん。
ヨガ業界の最近の動向について、業界の未来について伺いました。

「しばらくはヨガ業界が面白い。そう言えるレベルになってきました。」

【ジャパンフィットネス(以下JF)】
アジア最大級のヨガの祭典、「ヨガフェスタ」が無事終了しましたね。今年の傾向はいかがでしたか?
【綿本さん(以下W)】
今年の参加者は約3万5千人、臨港パークで行った「世界の朝ごはん」と併せて約5万人規模のイベントになりました。クラスや参加者を見ていると、今までにも増して業界の多様化を感じます。例えば水の上で行う「SUPヨガ」、吊るした布を用いて重力から解放された中で行う「アンチグラビティヨガ」など、新しいヨガの体験コーナーがあったのですが、どれも大人気。ひと昔前では少なかった、シニア世代や男性参加者も増えてきました。
【JF】
テーマは「レッスン」から「ライブ」へ。そこに込められた思いは何でしょう。
【W】
教える側と教わる側といった枠を越えて、一緒に「今」を作っていこう!と。ヨガの講師を見ていると、経験や知識以上に伝え方の差を感じるんですよ。
【JF】
フィットネスインストラクターの間でも、インプットは得意なのにアウトプットが苦手、という声がよく聞かれるんです。
【W】
もちろん経験や知識も大切ですが、むしろそれ以上に大きいものですね。養成コースや講習会で学ぶだけではいい先生にはなれない。これからは内へのベクトルではなく外に向かうベクトル、表現力、発信力、企画力といった、まさに「ライブ力」が必要だと思います。

綿本 哲さん

【JF】
ヨガフェスタは、それを鍛える場でもあるんですね。ほかにも、クラスにDJブースが置かれたり、外国人アーティストとの歌のコラボも新鮮でした。
【W】
そうですね。ステージの上で行ったパフォーマンス、「ヨガショー」もその1つ。「ダンスと何が違うの?」と思われる人もいるかもしれませんが、面白いと思ってもらえればいいんです。こういった枠にとらわれないものをヨガ業界から発信することに意味があると思うので。
【JF】
なんとなくヨガ=瞑想、まじめ、といったイメージがあるのかもしれません。
【W】
それらは、ある意味自分たちが勝手に作り出した枠だと思うんですよ。静かな部屋でティンシャが「チーン」みたいな(笑) カッコいいものや楽しいものに参加者が惹かれるのであれば、そういったものにも目を向けないとヨガは受け入れられません。ヨガという言葉を知っていてもやったことが無い人はまだまだ多いですから。
【JF】
発信という意味では、「ヨガの日」という新しい試みもありました。
【W】
ヨガフェスタの2日目を「ヨガの日」として、神奈川の海岸エリアで様々なヨガの無料イベントを募りました。
そもそもヨガは自立をうながすメソッド。フィットネスクラブやヨガスタジオなど、できあがったスペースで、決まったプログラムを行うだけがヨガじゃないんです。自ら企画して、リスクを負って、努力をする……。こういった一連のワークフローを学べる機会を作りたかったんですね。予想以上に反響が大きくて、きっかけと方法さえわかればやりたいと思っている潜在層がこんなに多いんだということが改めてわかりました。
【JF】
色々な固定観念を外すと、チャンスが広がってきそうですね。
【W】
そうなんです。例えば普通の習い事と同じように、ヨガにだって発表会のような見せ場があってもいいでしょ。よほど悟りを開いた人じゃない限り、淡々とヨガを続けることって難しいですから。ダンス甲子園のように、ヨガを表現するコンテストがあっても面白いですよね。そうすると女性たちは衣装として素敵なヨガウエアが欲しくなってくるでしょう。全国に4000ぐらいあるヨガスタジオで5人のチームを作り、その人たちが1万円程度のウエアを買う……。するとアパレル業界が元気になり、マーケットに再投資する循環ができる。もっとフレキシブルにとらえれば、日本独特のヨガ文化が形成される気がします。
【JF】
なるほど。一方で、ヨガインストラクターはかなり飽和状態だとも聞きますがいかがでしょうか。
【W】
私もよく「食べていけますか?」と聞かれるのですが、もちろん食べていけます(笑) ただ、確かにスタジオ指導だけを考えると、頭打ちになる日が来るかもしれません。でもヨガを行える場所は、スタジオだけじゃないですから。
【JF】
最近は屋外でのヨガイベントも増えたように思います。
【W】
そうですね。ヨガを行う場所も多様化しています。例えば企業の会議室や、オープン前のカフェ。新しいスタジオを1000個作るのは大変だけど、今ある施設を利用すれば教える場は拡がります。私は、ヨガ業界がIT業界や音楽業界などと同等に、就職したくなる業界として扱われるようになってほしいんですよ。ITや音楽って、実は難しいマーケットだけれど華やかでお金が稼げる様に見えるじゃないですか。ヨガ業界がビジネスの場として素敵に見えるように色々火種を仕掛けたいと思っています。
【JF】
素晴らしいですね! では、これからインストラクターを目指す人へ、アドバイスをお願いします。
【W】
業界全体が多様化してきていますから、ぜひご自身の今のフィールドを大切にしてほしいですね。もともとエアロビクスをやっていたのなら、エアロ業界へどのようにヨガをフィードバックできるか。ヨガorエアロかではなく、エアロにもランにも、あらゆるスポーツとヨガは共存できますから。それから1人ひとりの意識も大切。自分の行動なんて小さくてマーケットに影響ないだろうと思っているかもしれませんが、それは大きな間違いです。
例えば、バスタオルを敷いてTシャツでヨガを行っていてはマーケットが拡大しない。せっかく色々なビジネスが仕掛けられる時期になっているんです。私たちもより面白い火種を打ち上げていきますので、ぜひ一緒に業界を盛り上げていきましょう!

武田 淳也さん

アメリカ、日本におけるピラティス業界の現状について

武田 淳也さん
医療法人明和会 スポーツ・栄養クリニック 理事長。医師、日本体育協会公認スポーツドクター、整形外科認定専門医・スポーツ医、日本ピラティス研究会会長、日本のピラティスの第一人者。米国にてピラティスと出会い学び、Polestar Pilatesコンプリヘンシブ(総合)コースエデュケーターとして国内第一号認定。医師としては世界初。現在、ピラティスを正しい身体の使い方のための「カラダ取説」(徳間書店)として、一般の方々への普及も努める。

医師であり、Polestar Pilatesコンプリヘンシブコースエデュケーターとして、
ピラティスの普及に努めるPilates Lab代表の武田淳也さん。
アメリカと日本におけるピラティス業界について、伺いました。

「日本でも、PMAのような機関を1日でも早く立ち上げ、
ピラティスインストラクターの地位向上をめざして行きたい。」

アメリカにおけるピラティス業界の現状

近年のアメリカでは、Pilates Method Alliance(PMA)を中心に地域に向けて様々な活動が行われています。まずは、昨年のPMA第13回Annual Meetingでも報告があったPilates forYouth。このプログラムは、思春期の子供たちに安全にピラティスを指導することを目的にはじめられました。2004年に9~13歳の子供たちを対象にPMAのガイドラインに沿ったピラティス指導を行い、その結果を検証するパイロット・スタディが行われました。コアマッスル、ハムストリングの柔軟性、バランス能力に注目すべき結果が得られたとの発表がありました。このように科学的実証が積み上げられ、学校教育にもピラティスがとりいれられることが期待されています。

また、ピラティス人口が多いアメリカではありますが、その認知度を高める活動が行われています。その1つに2003年から始まった“PilatesDay”という年次イベントがあります。毎年5月の第1土曜と定められ、各地でイベントが行われています。PMAの協力のもと、地域の高齢者、腰痛に悩む人々や、スポーツ愛好者などにピラティスを普及する活動を行っているようです。日本でもこのような草の根的活動が必要であると考えています。

他にも過酷な身体障害を負いながらもピラティスをとおして、身体の可能性、Awarenessの向上を感じ、機能回復を果たした経験を伝える活動であるHeroes in Motionなどがあります。日本ではフィットネス向上のためのエクササイズと思われがちなピラティスですが、アメリカでは戦場の負傷者に対する心と身体のケアとしても活用されています。

日本におけるピラティス業界、指導者の現状

武田淳也さん

PMAは、ピラティスコミュニティをサポートするために作られた団体です。そのミッションは多様な面でコミュニティを育て、検定試験を用いて継続的に教育のスタンダードを保ち、ピラティスメソッドを奨励することです。日本にはまだこのような第三者機関は存在していませんが、日本でも団体の枠を超え、ピラティスの各教育団体が協力して集うイベントが行われ始めています。

2008年に私が会長を務める日本ピラティス研究会と私が代表を務めるPilates Labの共同開催でピラティス国際カンファレンスを開催(参加者は延べ700名以上)したのを皮切りに、現在、東京ビックサイトにて、毎回開催されているスポルテックにおけるピラティスフェスタも3年目を迎えました。今年は、ピラティス業界を代表する5団体(Polestar、BASI、PEAK、STOTT、FTP)が参加いたします。また今年、BASIピラティスの主催でピラティスワールドも開催されます。

PMAは、NCCA(The National Commissionfor Certifying Agencies:全米資格認定委員会)に認められた唯一の第三者ピラティス団体でその検定試験によりピラティスインストラクターを法律上、弁護することが出来ます。(アメリカ国内)

近年、日本国内においても、ピラティスの各教育団体が相互に協力し合う機会が増え、PMAのような機関を1日でも早く立ち上げ、日本におけるピラティスインストラクターの地位向上をめざして行きたいと思っています。

今後、日本で必要とされる人材と施設について

インストラクター自身の成長も欠かせないと思っています。国際的に認められる資格を持ったインストラクターの養成には、1年以上もの時間がかかり、また資格を得るだけでは真の指導者とも言えません。指導者となってからも、継続教育プログラムを受講するなど切磋琢磨する環境が必要です。私自身、ピラティスの専門性の高さを啓発する活動をドクターとしての立場から、理学療法士を中心とする各医療専門職種にも積極的にピラティスの効果を共有するようにしています。

高齢化する社会の中では、フィットネスを啓発するほどリスクは高まります。年齢を重ねれば身体の組織が弱まることが自然の摂理であることを理解し、基本的な身体の使い方をピラティスの叡智を通じて、指導できる指導者がフィットネス、メディカルいずれの業界からも育ち、また相互に連携をとることができるプロフェッショナルな人材が育つことを願っています。

実はその思いを形にしたプログラムこそが、私が3年前に開発した「カラダ取説」プログラムです。正に団体や職種の枠を越えて、この本来一般の方々向けのプログラムを学ぶために参加される、ピラティスやヨガ指導者、フィットネスインストラクター、パーソナルトレーナー、理学療法士などが後を絶ちません。

また、昨年は、私が著した論文「ピラティスおよびコアアラインによる体幹トレーニング」、「ピラティスによる腰痛管理」二編が、臨床スポーツ医学に掲載されました。

インストラクターだけでなく理学療法士のピラティス資格者が増える中、このような医学雑誌に「ピラティス」が掲載されることは私事ながら大変喜ばしく思っており、ピラティスに関わっている全ての方に、このような論文を指導にご活用していただければ幸いです。今後さらにピラティス指導者が増え、大学や病院でピラティスが(エクササイズとしてだけではなく、健康哲学としても)通常のリハビリ・教育の現場の中にもっと取り入れられる将来が来る事を期待します。

*本ページの内容は、「月刊ジャパンフィットネス」 2014年11月号特集より抜粋してご紹介しています。

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