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Vol. 03

マネープラン

運動指導者のためのファイナンシャルプランと
社会保障について教えてください。

相談:
昨年からフリーランスとして、インストラクターやパーソナルトレーナーとして活動しているのですが、不安定な収入で将来が不安です。保険や年金、投資なども含めたファイナンシャルプランについて、詳しく教えてください。(フィットネスインストラクター歴10年 33歳男性)
回答:
ファイナンシャルプランを設計していくには、ビジネスや人生における明確な将来ビジョンと、自己の経済活動における価値観についての再考が必要になります。
《 回答者: 井上 敦さん
回答者:井上 敦さん
税理士法人オフィス921 社員。公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー。
慶應義塾大学商学部卒業後、中央青山監査法人を経て現職。
総合格闘家・ブラジリアン柔術インストラクターとしても活動し、
スポーツ指導者としての顔を持つ公認会計士である。
【オフィス921 ホームページ】 http://www.office921.co.jp/
【ブラジリアン柔術インストラクター 井上敦 BLOG】 http://blog.livedoor.jp/valetopa/

ファイナンシャルプランとは

ファイナンシャルプランとは、結婚、出産、子供の進学、家の購入、事業の開始といった人生のタイムテーブルに沿って支出や収入、負債などを予測し、家族構成・資産状況などを考慮に入れながら人生のある時点で使えるお金はどれくらいかといったことを考える資金計画です。

これは、未来のことを予測する側面があるため必ずしも計画通りに事が運ぶ訳ではなく、かなりの不確実性を伴っています。しかし、予想が難しいとはいえ、プランを立てることは人生を見つめ直すことにもなり、非常に大切な事だと考えています。今回は運動指導者にとって大切な考え方をいくつか紹介します。

社会保障とリスクマネジメント

資産運用や財産形成の計画を行う上では、病気、怪我、失業、収入がなくなった後の老後の生活資金など、リスクや将来における不安に対しての備えについて考えることも重要です。こうした人生におけるリスクマネジメントを考える上で、皆さんがまず思い浮かべるのが保険や年金といった社会保障でしょう。

社会保障について考える上で、前提として重要なのが、国民健康保険や国民年金などの国の社会保障制度を、しっかりと利用するということです。(なお、雇用契約で仕事をしているのであれば、大半の人が社会保険と厚生年金に加入しています。)

国民健康保険に加入していれば、医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が、後で払い戻される高額医療費の制度や、高額療養費貸付制度を利用できます。年齢、収入によっても異なるので、個々の状況に応じて確認が必要ですが、目安として治療費を月額8万円以上支払った場合などは、治療費が払い戻される可能性が高いです。

普通の怪我や病気であれば、健康保険が適用されますので、手術や入院費に対して、過剰に不安になる必要はないということを、まずポイントとして押さえておきましょう。

民間の生命保険を利用している方も多いでしょうが、民間の生命保険はあくまでも国の社会保障にプラスして利用していくものです。例えば、月5千円の掛け金で、入院一日に対して一万円支給される民間の保険に入ったと仮定します。

10日入院した場合、10万円支払われることになりますが、月々5千円貯金すれば、2年もしないうちにこの10万円は貯まります。高額医療費の制度と合わせて考えてみて、現在の収入で本当に民間の保険加入が必要かを考えてみることが大切です。

また、国民年金に関しても同様のことが言えます。日本の年金制度が将来的に破綻すると考え、国民年金を支払わずに民間の年金タイプの生命保険に加入している方も、たまに見受けられます。日本の年金制度が破綻するかどうかの判断はここでは行いませんが、国民年金と民間の保険の大きな違いを一つだけ説明します。

それは国民年金は確定申告で課税所得の計算に当たり、所得から全額が控除されるということです。民間の保険ですと、最高額が4万円の控除です。(平成23年12月31日以前の契約ですと、最高年間5万円の控除。)そのため国民年金の方が支払う税金が安くなり、税金も考慮した実質的な利回りで見ると、国民年金の方がメリットが大きいと言えるでしょう。国民年金は、現在、過去10年間であれば後納が可能です。もし、未納になっている場合は、まずそこから見直すべきでしょう。

保険についての相談を、保険会社の人にすれば、まず保険ありきで話が進められます。そうした人に相談する前に、今、自分がどういう保険が使えるかということを確認してみてください。生命保険ではありませんが、賃貸契約での火災保険やクレジットカードには、旅行保険、個人賠償責任保険など様々な保険が含まれている場合があります。

こうした普段意識していない保険を確認して見ると、その他の保険に入る必要がないケースも考えられます。あくまで保険は足りない部分を補うものであり、毎月の保険費の支払いが家計を圧迫するようでは本末転倒です。

誤解のないように付け加えておきますが、民間の保険が無意味ということではありません。運動指導者の方は、仕事上で怪我をするリスクも高く、病気や怪我をすると仕事ができなくなってしまう可能性もありますので、個々のケースに応じて、民間の保険について利用を検討することも必要になってくる場合もあるでしょう。

また、運動指導者の場合、自分の怪我に対するリスクだけでなく、指導するクライアントやレッスン参加者の怪我に対しても責任を負わなければいけないケースも想定できます。相手方がいる場合、裁判などに発展し、多額の賠償金を請求されるケースも考えられます。こうしたリスクに対してはスポーツ保険や、掛け捨てのイベント保険などの対応だけでなく、事前に契約書を交わすなどして、怪我に対しての責任が誰にあるのかということを明確にしておくといったこともリスクマネジメントとして大切です。

自分一人で法律やリスクマネジメントなどの専門家のサポートを受ける事は、難しいと考える人もいるかもしれませんが、指導資格団体や指導者仲間などで、専門家に依頼し、共通の契約書の書面フォーマットを提供してもらうといったことも考えられます。

話は変わりますが、資産形成に当たっての注意してほしい事柄として、未公開株や社債の購入などの勧誘があります。近年はこれらの金融商品による投資詐欺が増加しています。楽して痩せる事ができないように、楽して儲かる事はありません。向こうから勧誘にくるような商品は、安易に飛びつかないように気をつけましょう。

フリーランスという働き方

キャリアプランやライフプランにおいて、明確な目標や将来のビジョンをもっていることが、ファイナンシャルプランを設計していく上で非常に重要です。フリーランスは、将来稼げる額も予測できず、毎月の収入も不安定なので、不安に思う気持ちは非常に理解できます。

しかし定年がない、仕事の掛け持ちできる、自由な時間を多く持てるなど、メリットも沢山あることに関しても考えて、起こりうる事態に対して、現状どのような対応ができるのかプランを立ててみると良いでしょう。

年齢や立場によっても、状況は変わってきます。ずっと現場でレッスンをしていきたいのか、起業して、人を雇う経営者や監督者になりたいのか、それとも後進の育成に力を注いでいきたいのかといった目的によってもプランは変わります。

また成功した場合の予測だけでなく、最悪なケースも想定し、借金をしてまで現在の活動を続けるのかといった、どこまでの失敗まで受け入れるかというラインを自分の中で引いておくことも重要ではないでしょうか。さらに、今手元に入るお金だけで物事を考えるのではなく、自己投資にかける時間や、ライフワークバランスなども考慮に入れて人生設計していくことも大切です。将来的な投資として、人間関係なども広い意味では財産です。

ライフプランに関しては、例えば結婚の予定がないのに結婚した後のプランを正確に考えてみても、現実的ではありませんので、緩やかな目標として設定しておくほうがいいかもしれません。もっともこうしたプライベートなプラン以上に影響があるのが、その人のお金に対する価値観です。「貯金するのは嫌だ、今が楽しければ良い」という人に無理に貯金をさせてもあまり幸せを感じないでしょう。

しかし、個人の価値観は別として、個人事業主であるフリーランスの人にとって、まず最初に必要なことは、貯金をすることかもしれません。フリーランスの人は、仕事を失っても失業保険は出ません。半年や1年といった長期間収入がなくても生活できるように、老後の資金や子供の学費などの貯金とは別に、生活防衛的な資金を貯めておくことは最も重要な資金計画ではないでしょうか。終身雇用も崩れはじめ、会社がいつ倒産するかわからない社会情勢なので、会社員も同様に貯金は大切だと考えます。

最後に、お金の問題は一人で悩むのではなく、家族や友人など、信頼の出来る人に相談してみましょう。それでも、わからない事があれば、私たちのような専門家を頼る事も一つの方法です。

(取材・文 塚本 建未)

*本記事は、「月刊ジャパンフィットネス」 2014年2月号に掲載された内容を基に構成しています。

*ご協力くださった回答者のプロフィールは、掲載当時のものです。

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